■学生戦争×交流作品■

秘密




【秘密】





黒いセーラー服、可愛い、好き♡
お気に入りのメガネに、黒いニーハイ、ピンクのハイカット。髪はゴムでしばっておさげに。

ここ…黒軍の学徒兵が通う学校にに来るとき、私は“眞鍋みさき”になる。

今回の潜入では、黒軍の機密をいくらか盗み出せた。それに加えて、学徒兵の情報も手に入ったので成果はまずまずだろう。
これ以上深追いすれば次の仕事に差し支えると判断し、白雪が敵地を去ろうとしたとき彼は現れた。

触らずとも分かるほどサラサラの金髪に一束混じった赤毛を左耳の下で一纏めにして流し、装備の所々に赤色が散りばめられている年若い男はとても一般人には見えない。

「お嬢さん。その可愛い手に持ってるもの、渡して欲しいなあ?」

それに加えて自身が握る情報を渡せと言ってきたのだから、黒軍の手の者だろうということにすぐに思い至り白雪は最大級の警戒をもって彼と対峙した。

「何の事でしょうか。」

「困ったな。どうしてもそれが必要なんだ…頼むよお嬢さん。」

一見紳士的に見える態度とは裏腹に軽薄そうな双眸が白雪を射貫く。
その目を見れば、相手が本気だとすぐに分かる。

情報を渡さなければ本気で殺すつもりなんだ。

――任務遂行のために、早く逃げなければ!!

そう思うや否や、白雪は男との対峙をやめ身を翻して元来た道を走り出した。

「――っ!がはっ?!」

しかし動き出すその瞬間を読まれ、男はすかさず白雪の背後から左脇腹に強烈な蹴りを入れた。
走り出した勢いも相俟って吹っ飛んだ彼女に、ホルスターに挿していた銃を抜きゆっくりと歩きながら近づいて銃口を向ける。

「頼むよ。俺も君みたいな女の子を手に掛けたくはないんだ。」

痛む脇腹を庇いながら何とか上体を起こし、少しも温もりを感じない冷たい碧眼を睨めつけた。

それを答えと取ったのか、男は銃弾を装填して気持ち悪いほど爽やかな笑顔を白雪に向ける。
瞬間、身の危険を感じた白雪は跳ね起きてまた走り出した。

――パンッ

乾いた破裂音がしたかと思うと、右肩に痛みが走る。凄まじい熱を帯びた何かが肉に食い込むのを感じて悲鳴を上げそうになる。

痛い、痛い!痛い!!

硝煙に混じって肉の焦げる嫌な臭いがする。撃たれるのは初めてで、その痛みの処理をどうしていいのか考え付かない。とにかく唇を引き結び歯を食い縛って走るが、思った以上に早く息が切れ、背中に痛みが走り、とうとう失速してしまう。
咄嗟に物陰へと身を潜めた自らの乱れた呼吸に混じって聞こえる、ゆっくりと近付いてくる足音にただでさえ早鐘を打つ心臓が大きく跳ねた。

「お嬢さん。さあ、それを渡してくれないかい?」

痛みのせいで集中力を欠き上手く気配を殺せなかったせいか、足音は自分のやや右後方で止まり先ほどと同じ紳士的で冷たい声色でそう言った。見つかってしまったのだと解れば道は二つにひとつだ。

――情報を放棄して逃げるか、自害か。

「……解りました…取引です。お互い武器を置いて、私はあなたに情報を渡し、あなたは私を逃がす。」

いつもの自分なら真っ先に後者を選んでいただろうに、苦しくて痛くてもう走れないのに、もう、動かない筈の体をどうにか動かしてでも――最悪情報を放棄してでも逃げようとしていた。
どうしても帰らなければならない理由があったから……明日、ネラと買い物に行くんだって約束したから。

「良いだろう。さあお嬢さん、そこから出てきておくれ。」

白雪は言われた通り潜んでいた物陰から出て来ると、男が銃を地面に置いたのを確認し持っていた機密文書をいれたメモリーカードを男に差し出した。
男は優しそうな冷たい笑みを浮かべて、それを受け取ろうと地面に置いた武器を跨いでこちらへ近付いてくる。

「賢明な判断だね。」

彼をギリギリまで引き付け、すぐには武器を取れないと判断した辺りで白雪は急激にターンをして全速力で逃げだした。

――パンッパンッ…パンッ

白雪が走り出してから数秒遅れて銃声が3発響く。

「っ、ぎっ?!」

背面から狙われれば、余ほど運が良くない限り避けられない。ただし相手が最初から狙撃していたのであれば、だ。
最初の二発は咄嗟に撃ったのだろう、まるで見当違いの方へ飛んでいったが更に遅れて聞こえた3発目だけは見事に白雪の右太ももを捉え撃ち抜いた。

さっきまで痛くて痛くて燃えるように熱かった肩からどんどん熱と感覚がなくなっていく。意識が途切れそうになった所で足に激痛が走った。

帰らなきゃ、約束、守らなきゃ。

任務よりも約束を優先してしまっている自分がおかしくて、痛みによる生理的な涙を流しながら笑ってしまう。
これだけ出血しながら走れば死んでしまうかもしれないのに、バカみたい、でも約束…守りたい。

一瞬悲鳴を上げそうになったが、程近くに迫っていた味方との合流地点までなんとか駆け抜け、仲間の腕に飛び込んで逃げきれた安堵からそのまま意識を失った。




次に目を覚ましたのは、3日後だった。
病院のベッドで、傍には白銀がいて。真っ先にネラのことを聞いたらあきれ笑いをしながら呼んでくれた。

手も足も動かなくて、約束も破っちゃって、ごめんねって謝ったらネラは泣いてた。
泣かないで、またお買いもの行こうよって言ったらもっと泣くから、どうしたら許してくれるか解んなくて白雪も一緒に泣いた。


それから、何だか色々あって、一緒に追い駆けっこしたあの男の人…えっと、いずみじゅん……じゅんじゅんとよく会う事になった。
ネラとか白銀はじゅんじゅんのことあんまり好きじゃないみたい!!強いし面白いのに。



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序盤ちゃんと諜報員してんのに、後半のアホの子ぶりががが


丹波さん宅【@tambaback】:いずみ盾くん
のりぬこさん宅【@nori_nuko】:ネラくん

をお借りしました!*。*'ヽ(*'ω')ノ*'。*ありがとうございました!!

alice*
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