pierce...

pierce...

一人で家を出ると打ち明けたオレに、ヴィオラは優しく微笑んで言った。

「初めてはヴィアナがいい…」

オレは頷いた。オレも同じだったから。
誰かに汚されるくらいなら、互いの心も純潔も総て二人だけのものにしたかった。

そこからはもう無茶苦茶で、ヴィオラもオレも獣みたいに交わった。
きっとコレが淫魔の本能なんだと気付いて堪らなくイヤになり、ヴィオラもいつかこうして誰かに淫らな姿を晒すんだろうと考えただけで目の前が真っ暗になった。

――そのくらい、オレ達はひとつだった。どうして二人に別れて生まれたのかさえ、見当がつかないくらいに。


誰にも内緒で、開花したばかりの本能の矛先を互いに向けて貪るように愛し合った。
何日も何日も二人きりで、地下室の階段下――オレが押し込められて息を潜めるように生きていたその場所で、名残惜しむように、何度も。

そのうち、ヴィオラを探す両親が騒ぎ出した。それに乗じてオレは家を飛び出した。ヴィオラの悲しみと、彼女の中のオレがいた記憶を宝石に変えて、それ以外は全部棄てて。


あれからもう何百年経ったか解らないが、やっぱりヴィオラがいないのは体が半分に引き裂かれて、何も無いのと同じくらい辛い。
この虚無を埋めるものが見つからないまま、放浪をやめて魔界に定住を決めた。
否、もしかしたらそこに何か…片割れを失った穴を塞ぐピアスのようなものがある気がしていたから。
それがまだ人か獣か生き甲斐か解らないが、平穏で退屈なモノならオレの穴を埋めるには全く足らない。

でも、ヴィオラの代わりもいらない。

代わりなんて絶対に存在し得ないから。


欲しいのは、全く別の――穿たれた穴を塞ぐくらいのピアス。
無くても生きていけるのに欲してしまうのは、例え死ぬ間際の一瞬だけでも満たされたいから。




end

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何でも半分こって、辛いのでしょう。
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