凋落と狂気

もしも、戦友が生きていたのなら…殴ってでも引き戻してくれていたのだろうな。

済まぬ…もう、戻れそうにない…。



《凋落と狂気》



もう、名も思い出せない友のことを想う。彼なら、狂ったこの現実から「正しい世界」へ導いてくれるのではないかという、淡い期待を抱きながら。
未だに信じられなかった。ラミアがあそこにいて、私が彼女を手にかけたという現実が…。
「イェルハルド…」
「ラミア?」
瞼の裏に焼き付いた、惨劇と表現するに相応しい映像が、己の名を呼ぶ声に遮断された。重い瞼を開けば、目の前には彼女に似た雰囲気の少女がいて…やはりこの狂った世界が現実であると思い知らされてしまう。
「……イルダ。」
イルダという名の少女に、最愛の人の面影を重ねて…毎夜の如く狂宴を繰り返した。頭の隅では、年端も行かぬ娘に対する淫行を恥じるのに、現実にはそれに溺れているだけでしかなかった。
「…それが…貴方の望みなら、私もそれを望むわ…」
くぐもった吐息の合間に呟かれる甘い言葉。麻薬のようでさえあるそれは、現実を忘れさせてくれる。

――やがて…愛していた人の名前すら、思い出せなくなっていた。

しばらくして、イルダは彼女に生き写しの男の子を産んだ。本当に自分の子か疑いたくなる程、純にイルダの血を引いている様に見えた。
アスターと名付けたその子は、成長すればするほどイルダの血が強く濃く出ていた。


――私はまた、罪を繰り返すのだろう。いっそのこと、誰か私を……


殺 し て く れ



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故人です。アスターとヤィデルの父親イェルハルドの視点で。
狂ってく過程みたいなのをね。
ラミアはヤィデルのお母さん、濔崋に似ているっていう。まあ本人は間接的にしか知らないのですけども…(写真でしか)
お母さんが死んだのは、お父さんのせいでした。でも病ん兄はそれを知らなくて、ずっと自分のせいだと思ってるっていう救われないパターン。

この一族は精神的に弱いのかもしれないと思う設定ばかりです^q^
こちらの作品もほぼ6年前のものをそのまま持ってきてます。

戦友=メインキャラクターたちの親世代。
まあその話も追々…
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